IINA算数教室

算数コラム

秘伝の書 No.003

算数で図を描かない子に「図を描きなさい」と言っても変わらない理由【文章題編】

「図を描きなさい」と言っても、次の問題ではまた描かない

算数の文章題で子どもの手が止まったとき、「図を描いてみたら?」「線分図にしてみたら?」と言われることがあります。

実際、先生に言われて図を描いてみると、問題が解けることもあります。

ところが、次の問題になるとまた図を描かない。そしてまた、「図を描きなさい」と言われる。

なぜでしょう。

単に面倒だからでしょうか。

図を描く習慣がないからでしょうか。

もちろん、そういう場合もあります。でも、それだけではありません。

そもそも子どもが、「なぜこの問題で図を描くのか」を理解していないことがあります。

図には、それぞれ意味がある

算数で使う図は、単なる絵ではありません。

線分図。

面積図。

表。

簡単な模式図。

それぞれに役割があります。

たとえば、数量どうしの違いや比較関係を捉えたいときには、その関係を見やすくする表し方があります。

また、二つの数量が組み合わさって一つの量をつくるような関係では、それを捉えやすい別の表し方があります。

ここでは具体的な使い分けを詳しく説明することはしません。

大切なのは、「図には、その形になる理由がある」ということです。

  1. 問題文に書かれている条件を整理する
  2. 数量どうしが、どのような関係になっているのかを考える
  3. この関係なら、こう表すと見えやすいと考える

本来、図はそこから生まれるものです。

「この問題はこの図」と覚えていないか

学習の中では、「このタイプの問題では、この図」「この○○算では、この図」というように、問題の種類と図をセットで覚えてしまうことがあります。

もちろん、代表的な図の使い方を知ること自体には意味があります。

しかし、それだけになってしまうと、問題の形が少し変わっただけで、「何の図を描けばいいのかわからない」となることがあります。

これはある意味、当然です。

数量の関係から図を作っているのではなく、「問題の種類を判定して、覚えている図を呼び出している」からです。

これでは、「図を描く」という行為そのものが、パターン別の暗記学習になってしまいます。

本来は「問題の種類 → 図」ではない

文章題を見て、「これは線分図」「これは面積図」とすぐに決める必要はありません。

まず見るべきなのは、問題の中にある数量の関係です。

  • 何と何を比べているのか
  • どちらが大きいのか
  • 全体と部分はどうなっているのか
  • 何が同じなのか
  • どの量とどの量が組み合わさっているのか
  • どの数量が変化しているのか

そうした関係を整理して、「これを目で見えるようにするには、どう表せばいいだろう」と考える。

その結果として図が出てきます。

  1. 問題の条件
  2. 数量関係

「問題の種類 → 図」ではなく、この順番がとても大切です。

図を描く目的は「正しい図を完成させること」ではない

子どもによっては、「図を描くなら、きれいに描かなければならない」「習った形と同じ図にしなければならない」と思っていることがあります。

でも、考えるための図なら、最初から完成している必要はありません。

一本の線でもいい。

数字を横に置くだけでもいい。

矢印でもいい。

途中で書き直してもいい。

大切なのは、「自分が今、何と何の関係を考えているのか」を紙の上に出すことです。

図は作品ではありません。答えを書くための欄でもありません。

考えるための道具です。

「図を描きなさい」の前に聞いてみる

文章題で手が止まっている子に、いきなり「図を描きなさい」と言うのではなく、その前に少し質問してみてください。

「何を求めるの?」

「何がわかっている?」

「この数字は何を表している?」

「何と何が関係している?」

「どちらが大きい?」

「全体はどれ?」

こうした問いに答えていくと、子どもが問題をどう捉えているかが見えてきます。

そして数量の関係が少し見えてきたところで、「じゃあ、その関係を紙の上に表してみようか」とつなげる。

この順番なら、「図を描く」という作業ではなく、「考えたことを図にする」ことになります。

図を描かない答案から、何を見るか

図を描いていない答案を見ると、「だから解けなかったんだ」と考えたくなることがあります。

でも、もう一段階前を見る必要があります。

  • なぜ図を描かなかったのか
  • そもそも数量の関係が見えていなかったのか
  • 関係は理解していたけれど、図に表す方法がわからなかったのか
  • 頭の中だけで処理しようとしたのか
  • 図そのものをパターンとして覚えていたため、当てはまる図を見つけられなかったのか

同じ「図を描いていない」という答案でも、原因は違います。

だから、図を描いたか、描かなかったかだけでは判断できません。

図を描いていても、理解しているとは限らない

逆もあります。

とてもきれいな図を描いている。一見すると、よく理解しているように見える。

ところが、次のように聞くと答えられないことがあります。

「この線は何を表しているの?」

「なぜここが同じなの?」

「なぜこの形にしたの?」

つまり、図そのものを覚えているだけというケースです。

これも、文章題で解法を丸暗記するのと同じです。

大切なのは、「図が描けること」ではなく、「その図が何を表しているのかを説明できること」です。

図は、文章と数式の間にあるもの

文章題では、次のような流れがあります。

  1. 文章を読む
  2. 数量の関係を考える
  3. それを図にする
  4. そして式にする

図は、「文章で書かれた状況」と「数式」の間をつなぐものでもあります。

だからこそ、「この問題では、この図を使う」と覚えるのではなく、「この条件は、どういう関係なのだろう」から始めてほしいと思います。

図には意味があります。

その意味を理解すれば、図は暗記するものではなく、「自分で作るもの」になっていきます。

「図を描く」は、答えまでの道のりの一つ

IINA算数教室では、答えだけを見ません。

式。

図。

途中の考え方。

そして、「なぜそう考えたのか」。

図を描いていないからダメなのではありません。

図を描いているから良いのでもありません。

大切なのは、「その子が数量の関係をどう捉え、答えまでどう進もうとしたのか」です。

そこに、その子の算数の現在地があります。

小学5年生の算数の現在地を確認したい方へ

「文章題になると図を描かない」

「図は描いているけれど、意味を説明できない」

「習った問題では解けるのに、少し形が変わると止まる」

「何の図を使うかを覚えて解いている」

こうした状態は、正解・不正解だけを見ていてもわからないことがあります。

IINA算数診断では、小学5年生の答案から、次の内容などを確認します。

  • 正誤
  • 途中式
  • 解法の選び方
  • 考え方の特徴

現在できていることと、これから優先して取り組みたい課題を整理します。